トランプ大統領就任以来金融市場は、大変目まぐるしい動きをしています。一寸先は闇そんな言葉が良く似合います。特に為替の変動は大きく日替わり相場のような様相を呈しています。投資家や証券会社でさえ先の見えない市場に大きな困惑と疲労感が見えます。
 そんな戦場のような金融市場にあって今なお、伝説となっている人物がいます。ジョージ・ソロスです。このユダヤ系の人物ほど評価の別れる人物はいません。ある者は天才と称し、ある者は悪魔と称します。特に日本・アジアではあまり良い印象を持っていないというのが正直な感想です。
 そんなジョージ・ソロスの生い立ちや彼の投資手法などをまとめてみました。

ジョージ・ソロスの生い立ち

波乱の幼少時代からイギリスへ

 ジョージ・ソロスは1930年ハンガリーのブタペストに生まれます。彼の両親はユダヤ系であり、ハンガリーでの名前はショロシュ・ジョルジと言います。当時はナチス統治下にあった為に法律家であったが、戦場へと向かい捕虜となるも何とか逃げ出し、それは当時少年であったソロスも例外でなく混乱する戦場を逃げまわっていました。また、この時期に本当の父親からナチスの手から逃れる為に偽造身分証明書を違う人物に生まれ変わるだけでなく、彼は本当の父と別れ役人の養子となりユダヤ人の財産を没収するという屈辱的な仕事をします。このことは彼にとって大きな傷を作ります。
 その後、17歳になったソロスはイギリスへと渡り仕事をしながら、名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスで2年程経済学を学ぶと共に後のソロスの思想に大きな影響を与える哲学者カール・ポッパーとの出会いは大きな転機となります。卒業後は宝石店や銀行勤務を経て、ニューヨークのウォール街へと移ります。

波乱のニューヨークと出会いと別れ

 元々金融に興味を持っていたソロスはウォール街でF.M.マイヤー社で投資家としてのキャリアをスタートさせると、ここで運命的な出会いをします。現在でも有名なジム・ロジャースとの出会いで二人の天才的な投資家の出会いは、1973年にクォンタム・ファンドの前身となるソロスファンドを立ち上げます。
 二人はヘッジファンドを活用して巨万の富を築き上げていきます。ソロスがトレーダーとしての経験を活かして投資し、ロジャースがアドバイスを送るといった関係性でした。しかし、この蜜月の関係も続かず1980年にロジャースが退社すると、翌年ソロスファンドは大きな損出を出し、運用資金が4億ドルから2億ドルになったのです。この危機を何とか乗り切ったソロスはブラックマンデーなどの金融危機も最小限の損出で乗り切ります。

世界のソロスへ


 1990年代に入るとソロスはその名を世界に知らしめる事になります。伝説的な「ポンド危機」です。この時に大きな利益を得ます。その額が10億とも20億ともまたそれ以上とも言われています。ちょうどヨーロッパがユーロへの統合の準備を始めていた時期で、不況のイギリスもこの流れでドイツに乗っかろうとする流れをソロスはいち早く見抜き、100億ポンドの空売りをするのでした。すると、この流れに投資家達が続々と乗ってきてポンドの売りが続くのです。
 その流れに慌てたイギリス政府は対抗策として、金利の引き上げをするもこのソロスが作った流れは止める事も出来ずに、ソロスに完敗を喫するのでした。そしてこの事からソロスは「イギリス銀行を潰した男」の称号を得ます。
そして、クォンタムファンドは世界最大のヘッジファンドとなります。

新たな危機と利益そしてソロスは新しい道へ

 1997年にはタイバーツの急落から始まる「アジア通貨危機」でもソロスの敏腕は冴えます。タイのバーツの急落に対して強気でくるタイの首相チャワリットは、ソロスの仕掛けた空売りに対して買い支えを続けるのですが、ソロスに同調したヘッジファンドの勢いは止まることなく、これまでのバーツの変動なしの為替から変動制へと移行せざるを得ない状況になりました。そしてこの流れはタイだけでなく、東アジア、東南アジアと続きアジアの通貨は経験した事のない通貨危機を経験する事となります。ここでもソロスは巨万の富を得ます。
 好調に見えたソロスですが、思わぬ落とし穴が待っています。俗にいうITバブルの崩壊です。ITベンチャー企業の隆盛によってもたらされたバブル的株価の上昇は大きな富を生み出す一方で、計画性がない幼稚な計画書が並び投資家達も疑念を持ち始めた時期とアメリカ同時多発テロの影響も重なり株価の暴落がもたらされた。その影響もソロスにも及び、60億ドルとも言われる損失をもたらします。当然ファンドの規模も縮小せざるを得ませんでした。
 巨万の富と大きな損失を繰り返しながらも、ソロスは順調に稼ぎ続けて2012年には資産総額は200億ドル以上とも言われるまでになりました。
 また、近年では以前より行っていた慈善活動への参加をより一層明確にしています。そして、2011年には投資家からの引退を表明しています。しかし、現在でもソロスの発言には大きな影響力が残っているのも事実です。
 しかし2016年にはファンド業界に戻ってきました。中国経済に対する憂慮とも言われています。

 最後にソロスの家族ですが、彼は3度の結婚をしており現在の妻は日系のタミコであります。そして4人の息子と一人の娘がいます。子供達もソロスの財団やファンド会社で活躍しています。

ソロスの投資方法

ソロスの伝える再帰性理論

 ソロスは哲学者を目指していた事もあり、その言葉は難解であり理解するのが難しい物があります。彼の投資方法の元として有名なのは再帰性理論です。色々な解釈がある中簡単に言うと、株価が上がる事で景気の浮揚を誘いその事で企業収益が上がる事で、更なる企業株価が上がり(ポジティブフィードバック)、その事で更なる景気が上がっていくという事ですが、最後にはその株価の評価に企業が耐えられなく破棄してしまうという理論です。

噂から広げ市場を操作する


 現実的にソロスは、自身の言葉から市場を動かそうとする言動もあります。彼はその事を反射理論という言葉で説明していますが、そこには実績と経験と先を読む力が必要となります。現在では、ソロスの動きは市場への影響力は計り知れない物がありますが、駆け出しの頃はそうはいかなかったと思います。
 しかし、彼のインタビューなどを読むとそのような行動を仕掛けているような言動もありますが、ソロスの様な先を読む力を持っている人物の言葉には流されていく傾向はあるでしょう。

小さく始めて状況を見て大きな投資をする

 その先読みの力が優れていてもソロスは予言者ではないですので、現実的な方法として小さく始めるという手法を用いています。とにかく目を付けた銘柄に投資を少額でしていき、世界の経済動向と政治動向を注視していき、ここぞという時に本格的な投資を行うと言う方法です。一見大きな儲けを持つソロスには似合わないですが、この少額の投資の間に多方面からのたくさんの分析が存在するのです。目先にとらわれないといった現実的な動きです。

 

ジョージ・ソロスの名言


哲学的な思想を持つソロスの言葉には難解な物がありますが、分かりやすく更に心にしみる言葉が多いのも確かです。その中から幾つか拾ってみました。

・まず生き残れ、儲けるのはそれからだ。

 自身の実践的スキルを要約するように問われた時の答えとして私が確かに人より優れている点は、私が間違いを認められるところです。
彼の哲学的な思想が伺いしれる言葉です。人間は過ちを犯す動物という思想から入っているからこそ、言える言葉です。

・成功すれば、人は自分の考えに関心を示してくれるはず

これは、現状のソロスの考えが市場に影響を及ぼしている姿が実証しています。

ジョージ・ソロスの個人的見解

 ジョージ・ソロスは人間として大変魅力ある人物である人物だと思われます。投資家の前に人間であるという思想に立っていると思われます。それは幼少時代の苦しい時期が影響していると思われます。更にイギリスでの学生生活での哲学的な思想を学んだ事が後々に大きな影響を及ぼしたと思われます。
 投資家として大きな成功を収めた人物ですが、大きな失敗もしております。それを認める(公表する)事で更なる成功を手に入れています。そして更なる儲けだけに捉われる事無く慈善事業にも力を入れております。(Wikipedia財団の大口寄付者でもある)
 二つの大きく異なる評価を持つのもソロスが人間臭いからではないでしょうか。一方では悪魔とも言われ、片方ではロビンフッドとも言われる極端な評価は人間として魅力ある人物の表れかもしれません。